今ここの深夜テレビドラマでブラジル北東部バイーア州の作家Jorge Amado(ジョルジェ・アマード 1912-2001)が書いた「Gabriela (ガブリエラ)」が放映されている。バイーア州の奥地から当時(1920年代)カカオの生産が盛んだったIlheusの町に出てきて自由(自然?)奔放に生きる主人公「Gabriela」の話である。1920年代の生活様式、慣習なども知ることができる。1958年に出版されたこの本はベストセラーになり1999年まで版を重ね第80版を数えるにいたった。テレビドラマ化は1960年にJanette Vollu 主演、 そして1975年にはSonia Braga主演で大人気を博した。1983年には同じくSonia Braga主演で映画化され、さらに今回Juliana Paes 主演で再テレビドラマ化となった。
さて昨夜は不義の妻とそしてベッドに一緒にいた愛人を射殺したCoronel (当時の有力者は名前の前に大佐を意味するこの尊称を付けて呼ばれていた)が若い娘と再婚し最初の夜を迎えるシーンから始まった。彼は結婚前に彼女に確かめていた「お前は確かに処女だろうな?、もしそうでなかったらお前を殺す」彼女の顔は一瞬青ざめたが、気を取り直しCoronelに向かい平気を装い「もちろんですとも、私は処女ですよ。」しかし彼女は経済的な理由で父親がこの結婚を決めた時、恋人と思い出を作ろうと一夜を共にしていた。彼女は母親にこのことを相談した。二人で花嫁衣裳を作ってもらっているおばさんに何かいい知恵はないかと相談すると「自分がなんとかしてあげるよ。」という返事。
やがて当夜、彼女が小さな箱を手に持っているのにCoronelが気がついた。「お祈りをするのです」と小さい十字架の首飾りを取り出した。しかし彼がむこうを向いた時その下から小さな赤い色の子袋を取り出し手の中に隠した。翌朝Coronelが目をさましシーツを見ると赤いしみがついていた。それに気がついた彼女「すぐ洗いますわ」「いや、洗わなくて良い、2階の窓からその血痕が見えるようにしてたらしておけ」これを聞いた彼女ほくそ笑んでシーツをベッドからはいで道を通る人が見えるように窓にかけた。
そのシーンが終わった時、突然妻が「思い出したわ、もう30年前くらいになるかしら、ほら家の前に住んでいたジョンとマリルダ夫婦。これと似た話を私にしたのよ。彼女はミナス州出身で、あの州は古い伝統を守ることで知られているからあの頃まであったのね。彼女が結婚式をあげて初夜を過ごした翌日の朝、ジョンのおばあちゃんが「コツコツ」とドアをたたいて言ったそうよ「後でシーツをドアのノブに掛けておきなさい窓に掛けるから」と。それを聞いたジョン、シーツをめくってみたの、真っ白。彼の顔はそれより真っ白になっていたそうよ。「おい、お前、用意はしてきたのだろうな」「用意ってなに?」「ほら、あの鶏の血を入れた小さい風船の袋だよ」「私たちはずっと付き合っていたからみんな知っているものと思ってあれ家に置いてきたわ。」花嫁衣裳を頼むと、衣裳のほかに花束とその鶏の血が入った小袋がセットとして届けられていたそうよ。「どうしよう、シーツに血のしみをつけなくてはいけない」妻の実家まで取りにいくわけにはいかない。ジョンは机の引き出しをあけ中からナイフを取り出して「これでちょっと指を切って血でこのシーツにシミをつけるか」「それしかないわね」ジョンはおそるおそる指にナイフを当て顔をそむけて切った。「イタッ」と彼が大きな声をあげると、傷から血が流れてシーツを染めていく。しかしなかなか血がとまらない。「ジョン、しっかり指を押さえていなさい。私は下に行って包帯をもらってくるから」と彼女はあわただしく階段を降りてテーブルを囲んでいたジョンの家族たちに言った「ジョンがけがをしたので包帯をください。」それを聞いてみんな心配顔になった。治療をして二人で下に降りると包帯をした指を見て、みんなニヤニヤした。ただひとりおばあちゃんだけはため息をつきシュンとなった。
こちらの日本語新聞で、私はインターネット版で購読している ニッケイ新聞( http://www.nikkeyshimbun.com.br ) でも今「ガブリエラ」の連載があっている。佐東三枝 訳で今339回目である。