これは私の知っているブラジル人の話です。彼の名はデニスそして双子の兄弟(二月五日の“兄、弟、姉、妹”を見て下さい)の名はデイル。
父親はDで始まる名前が気に入っていました。その双子は良く似ていて父親も見分けがつかずただ母親だけが違いを知っていました。その出来事は子供達が四歳の時に起きました。ある日母親は沸かしたミルクをテーブルにのせ隣に出かけました。子供達はミルクがはやく飲みたくて引き寄せようとしました。熱いミルクが子供達を襲いました。叫び声を聞きつけた母親が駆けつけ救急車を呼んで病院に運び込みましたが、治療の甲斐なく一人はやけどの傷から入った院内感染で亡くなりました。病院は死亡証明書を出すので子供の出生証明書を提出するようにと母親に言いました。母親は二通のうちの一通を窓口に提出し死亡証明書をもらい子供を埋葬しました。もう一人は傷も大分良くなり一週間で退院しました。
さて次の週、傷の治療に病院に連れて行こうとしました。「デイルが死んで寂しくなったなあ、それにしてもお前よく見分けがついてたな。俺はさっぱりわからなかったよ」 「だからあなたこうして二人にそれぞれ違う守り神のメダルを首にかけていたんですよ」 と母親が引っ張り出したのはデイルにかけていたものでした。母親は狂ったように言いました 「死んだのはあなたデニスだったのですよ」 「でもあの時おまえ出生証明書を、、、」 「あなた私が字が読めないって知ってるでしょう」 「ああ、しまったそうだったな、あのごたごたですっかり忘れてたよ。しかしもういまさら変えるわけにはいかないな」 それを横で聞いていたデイル、いや今はデニスとなったデイルはニコッとしました。
今までデイルと呼ばれるのが嫌でデニスを妬いていたからです。だからこの一週間みんなが自分をデニス、デニスと間違えて呼ぶのが嬉しくて黙っていました。
デニスは今年四十五歳、家庭を持ち元気で働いています。
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