今週マンションのリフォームをしている下の息子正人が昨日の夜、家が埃だらけになるので週末まで見てくれと恵美を連れてきた。夜8時をまわっていたので夕食を一緒にとった。人数が増えたのでご飯だけでは足りないと妻が焼きそばを作る。息子も恵美も大好きである。焼きそばを小さい皿に盛って妻がソファーでテレビを見ていた恵美の所に持って行った。しかしそれをちょっと横眼で見て、「ばあ、ごはんはないの?」??。いつもはご飯に目もくれないくせに。焼きそばを少しけずってごはんを入れて持っていくと「なんだ、ご飯はあったの、それでは魚」なんだ大人を馬鹿にしているのか。それを見ていた息子驚いた様子で「こいつ早すぎるよ!自分の時はもっと歳がいってて何をしているか分かってやっていたのに」(つまり親を困らせていたわけだ)とちょっと心配そうな表情になり身体をぶるぶるっと震わした
。
そしてこんどはニヤッとして、「しかしソロカバのゼナイデおばさんにはまいったな、すべて見透かされていたから」といって話し出した。
(まだ私たちが若いころは一年に一回の一か月の休暇には車でサンパウロに行き親戚めぐりをしていた。サンパウロ市から車で約1時間のソロカバには妻清子の叔父の元軍警大佐の清さん、彼の妻ゼナイデさんの家族が住んでいる。4,5日は世話になっていた。)
ある年の正月元日のの2,3日後の夕食時、テーブルにはいろいろなごちそうが並んでいる。さっと見渡すといつもでていた子豚の丸焼き肉が見当たらない、毎日夕食にでていた時は別に気にしてなかった。そこで「おばさん、子豚の丸焼き肉が食べたい」
それを聞くと前に座っていたおばさん、僕の鼻先に指を突き刺し、にやにやしていきなり「Bingo!!!」と大きな声、「わかっていたよ、そう言うだろうと、だから冷蔵庫の中にしまっていたんだよ」と言って大きな肉のかたまりを皿に持ってきて「肉のどこの所が好きかい直ぐ温めてくるからね」と返事も聞かずにそのまま温めてきた。「いやー見事一本取られて、あまり好きでもない豚肉を食べなければならないはめになったよ」
あと、彼の「あるもの嫌いのないものねだり」ぶりを二つ三つ
サンパウロの清子の母方のおじさんの正男さんの所に寄ったときの話。私たちが行くというので魚釣りが好きな正男さん(彼はヴィトリアに二度魚釣りに来たことがある)が釣った魚が食卓に並んでいた。さっと目を通した正人いきなり「おばさん、味噌汁飲みたい」(えっ、味噌汁!、家ではいつも残しているくせに。)「そうかい、おばさん毎日作るんだけど、今日は魚のスープがあるので作らなかったんだよ。ごめんね、今すぐ作るから待っていな」
私はちょうどその日は用事があって行けなくて妻が三人の子供を連れて妻の母方の一番下のおばさんでサンパウロ市内に住むスマ子さんの所を訪ねた時の話。やはり昼食時、テーブルには手の込んだバーベキューのいろいろな種類の肉が並んでいる。正人さっと見渡し叫ぶ、「おばさん、フェイジョン(ブラジルの代表的な豆料理)はどこにあるの?」想定外の質問にとまどう妻の叔母「それはね、ちょうど5分前まではあったんだよこのテーブルに、でもね何回も温めたものをお客さんに出すのは悪いのでさっきゴミ箱に捨てたんだよ。しかしね、あんたがこのテーブルにのっているものを食べてくれるなら、デザートにアイスを好きなだけあげるよ」と駆け引きにでた。食後、近くのバールにスマ子おばさんの息子たちとアイスを買いに出かけた。しかしイチゴとココナツのアイスだけで彼の好きなチョコレートアイスは切れていた。
仕事で1年10か月ほど家族と日本に住んで、ブラジルに帰って来て1-2年後だったので1984年頃の話か。国内旅行もあまりしたことのない父母と一緒にイグアスーの滝を見に行った。ホテルはイグアスー国立公園(世界遺産に指定されている)内のホテル、滝のすぐ前なので歩いて何度も滝を見に行った。壮大な景観に圧倒された。
毎日ホテル内のレストランで昼食をとっていた。いつもデザートのテーブルにはスイカがあったが正人は一度も手を付けなかった。しかしである、最終日チェックアウトの日早めに昼食を済ませてホテルを出ようと思っていた矢先、デザートのテーブルを一目見てスイカがないことに気付いた正人が叫ぶ「スイカが食べたい!」。すばやくボーイが飛んでくる。「冷蔵庫の中に残っているのがあるかもしれない。見てきましょう」
やがて大きな一切れのスイカがトレイにのせられ運ばれてきた。正人はその大きな一切れのスイカをさぞ満足そうに抱えてホテルを出ていった。彼、当時5歳。
これもゼナイデおばさんの家で起こった話。ある日曜日の夜、遅くまで起きていたのでみんなで夜のランチでもしようという話になった。テーブルに様々な種類のパンやチーズ、ハム、Salameなどが並べられた。イタリア系のゼナイデおばさんはこういう食べ物にはうるさい。チーズの見分け方やパスタ料理のレシピなどを妻と話している。
皆がテーブルに着こうとした時、正人が叫ぶ「ソーセージが食べたい!」
妻が叔母に無視してと頼む。叔母は妻に目配りをして言った「この子が大きくなってソーセージの顔になったら困るからね。」(ブラジルでは妊娠中の女性の食べ物の願い事を聞かないとその食べ物に似た顔をした子が生まれてくるという迷信があり、この期間、妊婦は相当な無理まで聞いてもらえる。)
彼女は言った「日曜のこんな時間、店は閉まっているし近くのバールのHotdogにはきざんだソーセージしかはいっていない。しかしちょっと遠くなるけどパウロのバールは一本のソーセージがそのまま中に入っているHotgogを売っているんだよ」その話を最後まで聞くか聞かないうちに叔父が車で飛び出した。Hotdogが入った袋を手にして叔父が帰って来るや否や叔母はまだ熱いHotdog
のなかからソーセージを抜き出し皿に入れ正人に言った「あのね僕、このソーセージ、しっぽまで食べないと承知しないからね」
まだまだ数えきれないほどある彼の武勇伝(??)、しかし恵美が生まれてからは人が変わり優しい責任感のある父親を演じている。