2016年8月20日土曜日

ブラジル、念願の金

先ほどオリンピックのサッカーの決勝戦がありブラジルがドイツを破り念願の金メダルが選手達の胸にかかった。 ブラジル男子サッカーにただ一つだけ足りないタイトルだった。銀メダルは何回かとったのだがワールドカップ5回優勝のブラジルでもオリンピックの金メダルは今まで取れずオリンピックの度に今度こそはと期待されていた。そして今回ようやく達成、ブラジル中が歓喜にわいた。

試合が終わったとたん電話がなった。あっ、息子からだなと感じた。 「パパイ、」という声が聞こえた。向こうが何か言う前に「ブラジルが勝ったなー!」と私。私が試合を見ていなくて知らせようとしたのか、または喜びを分かち合おうとしたのか短い会話の中で声が弾んでいた。

前半はブラジルのキャップテン、ネイマールの絶妙なフリーキックで1点、後半はマークが厳しいドイツが押し気味で1点取られた。延長戦に入ってもどちらも点が取れない。
いよいよPK戦。どちらも4人ずつ見事なキックで4対4、「ここでドイツが蹴りそこなうか、ブラジルのゴールキーパーが相手のボールを取るかして、ブラジルの選手が蹴りこめばブラジルが勝つんだがな~」と横で見ている妻につぶやく。これ以上蹴りあいが続くと安心してみていられないし負ける可能性が大きくなる。おそらくマラカナン・スタジアムを埋めた何万という観客そしてテレビを見ているブラジル人全てがそう思っただろう。

そしてPK戦の最後のドイツの選手が蹴ったボールをブラジルのゴールキーパーが守った。ブラジルの選手たちは喜んでいたが、「いやまだ早い、ブラジルの5番目の選手が点を入れないと試合は終わらないぞ」と慎重な思いが頭をかすむ。よく起きることなのだ。
5人目の選手がちょっと足をかばうように歩いていく。あれっ、ネイマールではないか。後半の試合中からちょっと足がおかしいと思っていたが大丈夫なのかな、と不安になる。彼は今回、ブラジル国民の優勝祈願をキャップテンとして一身に背負っていた。そのために南米選手権100年大会には出ずオリンピックでの優勝が自分に課された期待だと知っていた。

あまりにも重い責任を背負っているのが見え予選リーグではその大任に押しつぶされているような気がした。その空気はブラジル全選手を覆っているようだった。
しかし徐々にブラジルの選手たちの間でも緊張がほぐれ、いつものブラジルらしい軽快な試合運びとなっていき決勝戦までこぎつけた。

彼がその責任に感じPK戦の最後選手になるのか?ここで、もし失敗したらブラジル国民の期待を裏切ることにはならないのかと私の心の中にはそんな思いが横切った。
彼は少しボールから距離を置き走り出しそして途中ちょっと立ち止まると再び走り出しボールを蹴った。

ドイツのゴールキーパーは左に跳び彼はゴールを右に決めた。その瞬間ブラジルの選手たちがネイマールに抱きついた。彼は涙でしばらく声も出ない。あとでテレビ局のアナウンサーがボールを蹴るときに不安はなかったかと聞いた時、彼はペナルティキックの練習は何度もやったから自信はあったといった。それでゴールキーパーが左に跳んだのを見極めてボールを右にけこんだのだ。

選手たちは表彰台にのぼり金メダルを首にかけてもらい高らかに明るい笑顔で国歌を歌った。スタジアムの観衆も歌いそしてテレビを見ていた人たちも歌っただろう。私たちも。
ネイマールは責任を全うした満足感に満ち、私たちが知っているいつものすがすがしい顔で仲間と歌っていた。





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